【読書感想文】ルビンの壺が割れた
一昨日、本屋でこちらの本を購入しました。
ルビンの壺が割れた
新潮社出版
昼休みに本屋をブラブラしてたら、他の本よりも少し高い位置で目立つように平積みになっていたのがこの本でした。
ポップも帯も煽る煽る。
「大重版第1位」って、どこのなにの中で第1位なのでしょう?
私が購入したものの奧付には第11刷とありましたが。
蛍光色の表紙と煽りまくるコピーについつい購入してしまいました。
全156ページの短い読み物で、私は一時間かからずに読むことができました。
文体もメッセージのやり取りで進んでいくので、非常に読みやすいです。
ただ、帯にある通り、内容は確かに賛否両論!
以下、ネタバレになりますが、ご紹介していきたいと思います。
あらすじ
50代になってFacebookを始めた水谷一馬はFacebookをさ迷う中で懐かしい名前を発見する。名字は違うものの、なんとなく気になって投稿を遡ってみると、過去に投稿された写真の数少ない手がかりの中から、本人であると確証を得る。
思いきってメッセンジャーで連絡をとるところから物語は始まる。
一馬が懐かしい名前…未帆子宛に送ったFacebookのメッセンジャーが1通、2通と続き、3通目を送ったところでようやく未帆子から返事があった。
未帆子は一馬から連絡が来て戸惑ったこと、本当に本人か確証を持てなかったことを返信する。
以降、二人のメッセンジャーのやり取りが行われていく。
二人は恋仲で結婚式前日までいったのに、当日になって未帆子が現れず、それ以降、連絡が途絶えていたこと。
「君が幸せならそれでいいと思った」
「もう掘り返さないで欲しい」
「君の今の名字は?」
「お教えする必要はないと思います」
大学時代、未帆子が一馬のいる演劇部に入ってきた時のこと。
「スッピンの垢抜けない田舎の女の子」
「部長のあなたはみんなの憧れだった」
「毎週ボランティアに励む真面目な少女」
「天才とはこういう人のことを言うんだと思った」
未帆子がオーディションで役を勝ち取った時のこと。
「ヒロインは君しかないと思った」
「先輩に申し訳ないと思ったわ」
「それでも君の演技は圧倒的だった」
「君のお陰で賞をとることができた!」
初めてキスをした日のこと。
「あの時、僕は初めて君を綺麗だと思った」
「全身がとろけたわ」
一馬が幼い頃に両親を亡くし、血の繋がらない叔父夫婦に育てられたこと。
「叔父夫婦には奥さんの連れ子で優子という娘がいた」
「その子があなたの婚約者ね」
「あなたは婚約者のいるまま私との結婚を考えていた」
演劇部にスポンサーがつき、劇団を立ち上げることになった時のこと。
「でもスポンサー料は全て宮脇が持ち逃げした」
「それでもキミは僕についてきてくれると言ったね」
未帆子と結婚するために、許嫁との婚約を解消しに行ったこと。
「激昂した叔父には縁を切られたよ」
「でも、優子の部屋で日記を見てしまった」
「優子は叔父さんと中学生の頃から肉体関係にあった」
「叔父さんの部屋の金庫からも優子の裸の写真が出てきたよ」
未帆子の同級生から未帆子の浮気を教えられたこと。
「高尾くんとは浮気ではないわ」
「ボランティアに行く君の後をつけた」
「ついたのはソープだった」
「高校生の頃から大学進学のために高尾くんちが経営しているソープで働いていたの」
「それを知ったけど僕は許そうと思った」
「高尾くんとも寝ていたし、彼の友達と複数でプレイしたこともあるわ」
「ソープはただの肉体労働よ」
結婚式当日、行方をくらませたこと。
「前日、あなたの家で待っていたわ」
「待っていたけれど、机の奧で見つけてしまったの」
「見覚えのある小さな髪飾り」
「駅前の行方不明の張り紙に写っていた幼い女の子の髪飾りだったわ」
一馬が結婚式の半年後、逮捕されたこと。
「幼女殺害で逮捕されたのをテレビで見たわ」
「他にも余罪があることも」
「最近優子さんが行方不明になったことも知っている」「このあと、このやり取りを印刷して警察に行くところよ」
※台詞は文中に出てくるものではなく、ざっくりまとめたものです
ルビンの壺が割れた オススメポイント
とにかく「短くて読みやすい」というのがポイント。
他の口コミでも1~2時間で読めたという人がほとんどでした。本を読み慣れている人であれば、1時間かからずに読めると思います。
短い分、展開も早いですが、どんどん読み進めたくなるスピード感はとてもいいです。
キャラクターの素性がどんどん浮き彫りになっていく感じも驚きがあって楽しかった。
熱い演劇部の活動やキャラクターの立った登場人物は誰しもが記憶のどこかに覚えがあるようなもので、想像もしやすい。その分、まさかあの子が!といった驚きも強く感じられるのではないかと。
読み直して伏線を確認できるので、2度楽しめるのもポイントです。
ルビンの壺が割れた 残念ポイント
ポップも帯も煽りすぎで、読者の期待を上げすぎてしまうというのが一番の残念ポイント。
カバーの裏面に寄せられた感想がずらっと記載されてるんですが、
「読む前に戻りたい!」
「これから読める人が羨ましい」
「この本に出会えて本当によかった」
という感想がサクラに思えてしまうくらい。
ちょっと盛りすぎではないでしょうか。
もちろん、私もこのポップと帯を見て買ってみようかなと思ったわけですが、これに1000円出すのはちょっと勿体なかった気が。
文庫になって400円とかで買えるなら良いと思います。
個人的な感想
これで大重版で発売開始から1年経っても大きな書店で平積みされるのかー、と思うとずるいな…というのが正直なところ。
こういう手紙のやり取りで話が進んでいく小説は結構ありますが、情景描写とかも登場人物の目線を通した話し言葉で書かれるから小説として成り立たせるの結構難しいと思うんですよね。
それはつまり、うまい人が書かないと駄作になりやすいんじゃないかって意味。
私もこの形態の小説はいくつか持ってます。書簡体小説っていうんですが。
森見登美彦の恋文の技術とか。他にもいくつかあった気がします。
コンビニに有名マンガのまとめ冊子とか売られてるじゃないですか、ゴルゴ13とかコナンとか。
このルビンの壺が割れたは、ああいう暇潰し用のエンタメ読み物、という感じがしました。
内容も意外性のあるキャラクターはよかったですが、それぞれの伏線が弱く突飛でしかない印象。
また、実は…の部分も義理の父娘の近親相姦、横領、ソープ嬢、ロリコン犯罪者とすごく意外性があるわけでもなく、あー、はいはいこういうやつね、みたいな。
最初は未帆子が悪者っぽかったのに、最終的には一馬が悪いっていうのは綺麗にひっくり返ってよかったですが、幼女殺害は急展開すぎるかな、と。
また、ストーリー的にはこの枚数がちょうどいいのかもしれませんが、本好きには読み足りないと思います。
本を読んだ!という達成感があまりなかったのも個人的には残念ポイント。
そういうところまるっと含めて、買わなくてもよかった、というのが私の感想。
図書館や人に借りて読むのがちょうど良い。
こういうこと言っちゃいけないかなと思いますけど、これに1000円出すなら、蜜蜂と遠雷のハードカバー買えばよかった。