【感想】REDandBEAR クイーンサンシャイン号殺人事件
七海ひろきさんの退団後初の主演舞台を見に行きました。
RED and BEAR クイーンサンシャイン号殺人事件
2020/1/24~2/2
原作:林誠人
脚本:天真みちる
演出:中島康介
主演:七海ひろき
出演:西岡德馬、新田恵海、佐奈宏紀、近藤頌利、遊馬晃祐、正木郁、三原大樹、堀田優希、柴小聖、後藤夕貴
初日に德馬さんが「犯人はシーッ!」って言ってたので、犯人は書きませんが、ネタバレはあるのでご注意ください。
ミステリよりもコメディとして見るべし
まずはお芝居の感想から。
このRED and BEARには過去に公演された舞台をアレンジしたものになっています。パンフによると、原作とは全く別物になっているとのことですが、私は原作のお芝居を見たことがないので、あくまでもRED and BEARでの感想です。
若干上から目線が入るかもだけど許して。
今回の脚本は元花組の天真みちる(たそ)です。
何故たそが脚本を?という疑問......
遡れば、何故宝塚で全く絡みのなかった(ように見える)たそがちょいちょい出てくるの?という疑問は常々感じていたのですが...
私の中では、お芝居の最重要項目はストーリー。
以前、地球ゴージャスの舞台を見に行って、役者の良さを引き出すのを目的にした舞台は自分に合わないという結論が出ました。
ブログには書いていませんが、以前、宝塚の娘役OGが出ている小劇場の舞台を下北に見に行ったことがありました。
その時は、芝居の最中に突然演者が全員でLOVEマシーンを踊り出すという謎の演出があり、度肝を抜かれました。話の前後の繋がりはまるっきり無視で、どういう意図があって、こういうことをしてるんですか?って問いただしたいぐらいだったんですけど、周りが普通に笑ってるから、この界隈だと普通のことなのか...こちらも自分には合わないなと納得させました。
ストーリーに全く関係ない見せ場やその場しのぎの笑いを入れたお芝居は私は好きになれない。
今回のたその脚本は七海さんを1番目立たせつつも、全ての役者にスポットをあて、ストーリーも破綻しないようにうまくまとめてるな、と思いました。
正直、七海さんを推しまくって、七海さんとその他みたいになってしまっていたらどうしよう...と思っていたので、その点は安心でした。
主演だからって特別扱いが過ぎる!みたいなことになるのを恐れていたので...
今回はそういう私のNGスイッチは押されませんでした。
アドリブを加えられる点をあらかじめ数箇所設け、複数回見に来ている人にも飽きさせないような工夫をしているのは、宝塚ファンをよく理解しているからでしょう。
オープニングがしっかりあったのもよかった。
投影される役名のフォントも色もレトロでミステリという題材にあってたし、タイプライターで打つような演出も◎。
観客を巻き込んでの演出や、キャスト一人一人にメインとなって歌う場面があるのは非常に良かったと思います。
事件が発覚した時、観客の皆さんにも事情聴取するからね、と言ったのに、実際にしなかったのは勿体なかったかな。
あった方が面白くなってたかなって思います。
あと、仕方ないのかもしれないけど、舞台セットが変わらないのが気になりました。
お芝居的にも場所は同じだし、階段があったり、背景が変わったり、幕を使ったりと工夫してはいるんですけど、普段宝塚を見ていると少し物足りなく感じてしまいました。
演出は良かった。脚本も短い時間の中で出演者それぞれにスポットが当たっていてよかった。
ただし、ミステリという点に注目して見ると穴だらけです。
もちろん、小説と舞台は並べちゃいけないとは思うんですが、動機がしっかりしている分、その他が甘いんですよね。
脅迫状を手書きにしたり、指紋ベッタベッタ残してるのは、まぁ、犯人が幽霊だっていうアピールだと置いといたとしても、3人目の殺害は密室殺人なのに方法が明かされなかったし、犯人が3人目に罪を擦り付けようとするのも下手くそすぎる。
そもそも、犯人を名乗り出た側も強引すぎる。
2人目の殺害に関してはよくある手法だけど、この方法だと確実に殺せる可能性低いですよね。
歌詞に沿って殺していってるのに、余計な人まで殺しかねないし。
コナンでも、確実に狙うためにもうワンクッション挟んでる。用意周到に準備した割には甘い。
七海さんが犯人2人の繋がりを気付く場面はさり気なくてよかったかもしれないけど、チョイスが微妙...
ミステリだとヒントを読者に開示するのが鉄則だけど、焼身自殺とか、1人だけ珈琲飲んでないとか気付いて欲しいところがわかりやすすぎるのにそこはそれなんかーいっていう。
(3人目の被害者が、犯人名乗り出たのは想定外だったみたいだから、あえて珈琲飲まないで注目を集めようとしたわけじゃなさそうだし)
ミステリにおけるありきたりな手法がとっても沢山重ねられていて、ミステリの部分だけを取り出して見てみると残念な仕上がりでした。
ただ、コメディの手段として殺人事件を使ったと見れば面白かったんじゃないかと思います。
最初、イタコ降臨もストーリーには全く必要ないと思ってたけど、犯人が幽霊かもしれないという印象をよりつけるためには効果的だったし、ストーリーから大きく逸脱していたわけではなかった。
アドリブで絡まれる七海さんという点では、ファン的にも美味しかったですし、頭に残る曲で段々くせになってきます。
藤井大介先生のショーみたい。
最初は「え?」って思うんだけど、繰り返し見てるとハマってくる感じ。
七海ひろき主演舞台として
ミステリアスな探偵という役は、七海さんに非常に似合っておりました。
この為に染めた赤い髪もずっとこの色だったよねぇ?というくらいお似合いで馴染んでおりました。
歌あり、ダンスあり。
ですが、宝塚とはまた違う新鮮さがありました。
他の人が歌ってる場面で後ろで踊ってるのなんて、宝塚でもしょっちゅうありましたが、ショーだとタカラジェンヌの「私を見て!」というオーラがすごいのに、ここではそれを消して、無表情でバックダンサーに徹しているのが、とっても新鮮で面白かった!
何より、男性の中に混ざっても、男役として存在し、更にカッコイイと思わせてしまう七海さんは流石でした。
残念なポイントがあるとすれば、役が薄いところ。
ただ、物腰の丁寧なミステリアスな探偵、というだけなんですよね。
途中、BEARのしょーもないギャグを面白がって1人で笑うって箇所があるんですけど、そこ1箇所だけだし、キャラ付けとしては弱い。
七海さんの中性的な雰囲気と高貴な佇まい、西岡德馬さんとの対比がシッカリしているから良かったけど、出来れば何かもう1つキャラを立たせられるものがあればよかったかな。
その他の出演者
まずは西岡德馬さん。
若いメンバーの中に德馬さんがいることで、舞台が締まってる印象を受けました。
惚けた感じもとっても面白く、アドリブの際の返しも流石...!という感じ。
バンドメンバーも4人の個性がバラバラで見応えあったし、喧嘩の場面は宝塚にない男性ならではの迫力がすごかった!
あと、遊馬くん演じるタイセイのジャンプ力がとにかくすごい。
必見です。
新田恵海さんは、流石の歌唱力。
元々高いお声なんですけど、エンディングの歌はお芝居の中より更に高くしているように聞こえました。
ただ...ただね、なんでマネージャーなのにあのお衣装なのか...
最初、バンドとは別の出演者かと思ったよ
ポッシのメンバーだったんだねーー
ハロプロエッグだったから、グループ名(チャオベッラに変わったことも)は知ってたんだけど、パンフ見るまで気付かなかった。
登場シーンが印象的で、白衣の助手役がハマってました。
パーサー伊藤役の佐奈宏紀くんは本人のキャラが秀逸。面白すぎる。
キャラクターを知ってからお芝居見ると、ところどころで佐奈くんらしさが出てるのが見えてクスリ。
ご挨拶での七海さんとの絡みは最高です。
ブタカンと衣装の2人も、キャラが立ってて脇を締めてます。
ブタカンが都合のいいやつすぎて面白い。
また七海さんの舞台が見たい
10ヶ月ぶりに七海さんのお芝居を見ました。
指先から視線の先まで意識が行き届いた七海さんのお芝居を見ることができて本当に幸せでした。
サンシャイン劇場のどこの席に座っていても、七海さんの温かい視線を感じます。
2階席にもしっかり目線を投げるところ、宝塚の時と変わってなくて心がじんわりしました。
今回のお芝居も新鮮で良かった。
次は海外ミュージカルとかも見てみたいなぁ。
また新しい七海さんが見れる日が来るの楽しみにしてます。